金宗瑞(キム・ジョンソ)はなぜ端宗(タンジョン)を守れなかったのか

 

金宗瑞の油断

あせった首陽大君は、兵を集めたり、日夜謀議を行なったりしています。金宗瑞の側がそういう不穏な動きを察知し、何らかの手を打っても不思議はないのですが、史実を見ると金宗瑞の側にそういう動きが見られません。ここが不可解なところです。一体、金宗瑞は何をしていたのでしょうか。
正史の『朝鮮王朝実録』によると、1453年10月10日、金宗瑞の自宅を首陽大君が従者2人を連れて訪れます。そして、対応に出た金宗瑞は門前で襲撃されてしまいます。このときの金宗瑞はあまりに迂闊(うかつ)です。「大虎」ともあろう人が、脇が甘すぎるのです。
年齢のせいなのか、単なる油断か。政権の中枢を担っていた人があっさり襲撃され、首陽大君に「金宗瑞が謀反を企てたので成敗した」と言われてしまうのです。




還暦を過ぎて普通ならば隠居生活に入るところを、端宗の後見人になり、かつ自分の職責をはたさずに殺されてしまう……いわば敗者のままで金宗瑞は絶命しました。
さしもの英雄も最期は「犬死に」のようになってしまったのは残念なことでした。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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