正祖(チョンジョ)の命を狙った暗殺団が王宮に侵入した!

 

1777年7月28日の深夜、即位して2年目の正祖(チョンジョ)は王宮で本を読んでいた。突然、王宮の回廊の上から、瓦を踏む足音が聞こえてきた。正祖は耳をすませた。どう考えても、人間の足音にしか聞こえなかった。




王宮に移転が実行された

「怪しい者が忍び込んできたのか……」
そう察した正祖は警護の者たちを呼んだ。
「不審な足音がする。すぐに見てまいれ」
王命を受けた者たちは、足音がしたあたりを徹底的に調べた。すると、瓦、砂地、土などのあちこちに足跡が残っていた。怪しい者の侵入があったことは間違いなかった。
正祖はすぐに側近の洪国栄(ホン・グギョン)を呼んだ。
洪国栄は興奮しながら言った。
「これは政変を起こそうとする者たちの仕業(しわざ)に違いありません。飛ぶ鳥や走る獣であるまいし、どうして宮殿にやすやすと入ってくることができましょうか。賊がまだひそんでいるかもしれません。宮中をしらみつぶしにしましょう」
「そちにまかす。徹底的に調べよ」
正祖に一任された洪国栄は、宮中にいた護衛の兵士を動員して探索を始めた。しかし、深夜であまりに暗かったので、結局は怪しい者を見つけられなかった。




翌朝になると、昨夜の異変を知った重臣たちが続々と宮中に集まってきた。
その臣下たちを前にして正祖が言った。
「あたりが明るくなってから屋上を調べてみたら、数十の銭が見つかった。賊が忍び込んできたことは間違いない」
同時に彼は、賊が宮中にたやすく侵入してきたことを問題視して、警護態勢の不備を指摘した。正祖にしてみれば、「しっかり警護せよ」という心境だったことだろう。
この一件を経て、王宮が警備に適した昌徳宮(チャンドックン)に移転となった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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