韓国ドラマを見ていると、食事をするシーンがたびたび登場する。韓国時代劇でも、例外なく宴席や食事をする場面がクローズアップされる。その料理と言えば、誰もが真っ先にキムチを想像するのではないだろうか。日本の食卓でもすっかりおなじみになったキムチは、「赤くて辛い」という韓国料理のイメージを代表する料理である。しかし、この「赤くて辛い」キムチは、18世紀以降の話だ。
宮廷料理に赤いキムチが出てこない
韓国時代劇『宮廷女官 チャングムの誓い』を例にあげてみよう。
このドラマは、水刺間(スラッカン/王や王妃の料理を作るところ)の下働きから11代王の中宗(チュンジョン)に信頼される医女になるまでを描いたドラマだ。この中で赤いキムチは全く出てこない。視聴者の中には、宮廷料理なのだから赤いキムチが登場すると思っていた人も多いのではないだろうか。
『宮廷女官 チャングムの誓い』は、1506年から1544年まで在位した中宗の時代が舞台であり、現在から500年くらい前になる16世紀前半の物語である。この時代には、トウガラシというものが朝鮮半島には存在しなかったのだ。
当時の朝鮮半島では、肉の腐敗を防ぐためにコショウを用いていた。しかし、コショウは自国で作り出すことが不可能で、全て輸入に頼っていた。それはとても価値の高いものだったのだ。
実は、トウガラシが朝鮮半島に根づくのは17世紀以降のことであった。(ページ2に続く)
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