朝鮮王朝を代表する女流芸術家の申師任堂(シン・サイムダン)〔1504年~1551年〕は、5人姉妹の二女として生まれた。父は学問にすぐれていて、人望が高かった。母は心優しく教育熱心であり、王から表彰されるほどだった。
周囲を驚かせた絵の才能
恵まれた環境の中で、申師任堂は幼い頃から並はずれた才能を発揮していく。彼女は7歳で漢字を覚え、書を学んだ。中でも、絵の才能は周囲を驚かせた。
申師任堂の両親は、わが子の画才を高く評価し、本格的な絵の勉強をさせた。
申師任堂の絵に大きな影響を与えたのは、故郷・江陵(カンヌン)の雄大な自然だった。彼女は江陵の山河、動植物を一心不乱に描き続けた。
周囲の人たちは、彼女の絵の才能をほめたたえた。そんな申師任堂の画才を示す逸話がある。
ある日、申師任堂がイナゴを描いた絵を庭に置いておくと、本物と勘違いした鶏が絵を食べてしまったことがあった。
申師任堂の才能を示す話は他にもある。とある宴会場でのことだ。
他人から借りたチマ(スカート)を汚してしまい泣き崩れる女性がいた。
申師任堂は泣き続ける女性をなだめると、彼女の汚れたチマにブドウの絵を描き始めた。申師任堂が描いたブドウはまるで本物のように瑞々しかった。女性はそのチマを急いで市場に売りに行き、新しいチマを買って貸主に返したという。(ページ2に続く)
申師任堂(シンサイムダン)!イ・ヨンエが『師任堂、色の日記』で演じた女性