朝鮮王朝を描いた時代劇で一番よく登場してくるのは、王ではないだろうか。なんといっても、「朝鮮王朝実録」によって王の言動のあらかたが把握されている。即位から亡くなるまで、王は毎日の行動と発言を側近たちによって記録され続けたのだ。これだけ人物像がはっきりしていると、時代劇に出すときも好都合なのだ。
王権の安定度
「朝鮮王朝実録」は、歴代王の事績を記録した編年体の正史である。王が亡くなったあとに編纂が始められ、王に仕えた秘書と記録官の記述をもとに作成された。
この「朝鮮王朝実録」を読めば、どの時代にどんな出来事があって、それに対して王がどう語ったかがわかる。
韓国の時代劇で王が重要な役割を担っているのは、「朝鮮王朝実録」を参考にして史実に沿った制作ができるからなのだ。まさに、韓国時代劇のネタ本は何をさしおいても「朝鮮王朝実録」ということになる。
とりわけ注目したいのが、歴代王の即位に至る経緯である。
なぜそこにこだわるかといえば、王権の安定度に決定的に影響しているからだ。もっとわかりやすくいえば、「正室から生まれたのか、側室から生まれたのか」「長男なのか、二男以下なのか」「生母が生きているのかどうか」「信頼できる側近がいたのか」といった要素で、王の立場というものが大きく違うのである。
実際、王は絶大な権限をもつ唯一無二の存在だけに、そこに群がる親族や家臣が欲望をむきだしにして争い、王の後継者をめぐって血が流れたことが何度もあった。後継者選びも一筋縄にはいかないのだ。
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