海東の盛国
大祚栄は719年に世を去った。
「歴代の王は高句麗の魂を絶対に忘れるな」
この遺言が大祚栄の生き方を端的に表していた。彼は高句麗の民として生き、高句麗の土地を再び取り返したのだ。
大祚栄ほど高句麗を愛した人間は他にいなかった。
その彼の息子が2代王の武王(ムワン)となり、交易を盛んにして渤海の領土をさらに広げた。
この国は日本とも因縁が深く、渤海は使節を何度も日本に派遣している。新羅を牽制するためにも、日本との交流が有益だったのである。
渤海の最盛期は9世紀だった。新羅よりはるかに大きい領土を誇り、“海東の盛国”と呼ばれるほどの繁栄を見せた。
しかし、10世紀に入ると異民族の侵攻を受けて国力が衰え、926年に滅亡した。始祖の大祚栄が「震」を建国してから228年目のことだった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
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