人気時代劇の舞台となった時代
正祖は即位前から党争のとばっちりを受けて何度も命を狙われている。まさに薄氷を踏むような経験を経て王になっていて、その人生はあまりに劇的だった。
いわば、『イ・サン』のドラマとしての面白さは正祖の波瀾万丈の人生があればこそ、なのである。
正祖は1800年に世を去り、以後の朝鮮半島は政治が腐敗して内政も外交も混乱をきわめた。
そういう意味では、今の韓国の人たちが淡い懐古趣味で振り返られるのは正祖の時代までである。それ以後の王朝は悲しみばかりが深くて、振り返っても虚しくなるだけという有様なのだ。
時代劇は娯楽であると同時に歴史の教訓を含んでいる。韓国の人たちは19代王・粛宗の時代から22代王・正祖の時代までの約125年間を振り返りながら、「党争が激しかったけれど、それを乗り越えて名君が生まれ、国家も確実に発展していった」と実感できるのである。
それゆえ、この時代を舞台にした時代劇が数多く作られ、その中から『イ・サン』『トンイ』という人気作品も生まれた。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
張禧嬪(チャン・ヒビン)を寵愛した粛宗(スクチョン)!朝鮮王朝全史19
『イ・サン』が描いた英祖(ヨンジョ)と思悼世子(サドセジャ)の悲劇とは?