あまりに哀れな端宗(タンジョン)/朝鮮王朝人物列伝特選13

 

端宗(タンジョン)は、叔父である首陽大君(スヤンデグン)に王の座を奪われた人物だ。彼は在位期間が短すぎて王として特に目立った功績を残していない。そんな端宗の歴史は、悲劇と言えるものだった。




幼い王の誕生

5代王・文宗(ムンジョン)は、4代王・世宗(セジョン)の後を継いで王となったが、病弱だったため、即位から2年後の1452年に世を去ってしまう。その文定の息子が後を継いで6代王・端宗となった。当時、まだ11歳と幼かった端宗は、自分で政治を行なうことができなかったので、異民族の侵攻から国土を守った英雄の金宗瑞(キム・ジョンソ)と、義を守る忠臣として頼れる皇甫仁(ファンボ・イン)の2人が補佐役として彼を支えた。
しかし、強い野心を持って王の座を狙っていた端宗の叔父(文宗の弟)である首陽大君は、その2人を「若い王の補佐となっていること理由に、権力を独占している」と思っていた。
金宗瑞や皇甫仁に不満を抱いている人物は他にもいて、首陽大君はそういった人物を集めていった。その中心となったのが、韓明澮(ハン・ミョンフェ)と申叔舟(シン・スクチュ)である。




首陽大君は、同志たちと様々な議論を交わしたが、中には弱気になって逃げ出す者や彼を止めようとする者が出始めた。それによって、彼の決意が一瞬揺らいだものの、結果的に弱気になった者たちを振り払い行動を開始した。
首陽大君は2人の従者を連れて金宗瑞の屋敷を訪れる。彼は、屋敷の前にいた金宗瑞の息子である金承珪(キム・スンギュ)に、「お父上に会わせてほしい」と頼んだ。
しばらくすると、中から金宗瑞が現れ、首陽大君を屋敷の中に招こうとする。しかし、いくら入るように促されても、決して中に入らなかった。
なかなか中に入ってこない首陽大君に自ら近づいていく金宗瑞。彼は首陽大君から紗帽についている羽のような飾りを貸してほしいと頼まれて、息子の金承珪に持ってくるように言った。すると、首陽大君が懐から一枚の書状を取り出した。
金宗瑞はそれを読もうとするが、すでに日が落ちて辺りは真っ暗だったため、月明りに照らして書状を見ようとした。




その瞬間を見逃さなかった首陽大君が合図を送ると、従者の1人が隠し持っていた鉄槌で金宗瑞を殴り倒した。不意をつかれて倒れ込んでしまった彼を見た息子の金承珪が、父親の上に覆いかぶさるようにしてかばうが、そこをもう1人の従者が隠し持っていた刀で2人を切りつけた。
(ページ2に続く)

朝鮮王朝の悲劇の王「端宗(タンジョン)」の最期とは?

悲惨な最期を遂げた端宗(タンジョン)に涙する

端宗(タンジョン)から王位を奪った世祖(セジョ)!朝鮮王朝全史5

甥の端宗(タンジョン)から王位を奪った世祖(セジョ)の悲劇とは?

死六臣(サユクシン)!端宗に尽くした見事な忠誠心

固定ページ:

1

2

関連記事

ピックアップ記事

必読!「悪女たちの朝鮮王朝」

本サイトには、「悪女」というジャンルの中に「悪女たちの朝鮮王朝」というコーナーがあります。ここでは、朝鮮王朝の歴史の中で政治的に暗躍した女性たちを取り上げています。
朝鮮王朝は儒教を国教にしていた関係で、社会的に男尊女卑の風潮が強かったのです。身分的には苦しい境遇に置かれた女性たちですが、その中から、自らの才覚で成り上がっていった人もいます。彼女たちは、肩書社会に生きる男性を尻目に奔放に生きていきましたが、根っからの悪女もいれば、悪女に仕向けられた女性もいました。
「悪女たちの朝鮮王朝」のコーナーでは、そんな彼女たちの物語を展開しています。

もっと韓国時代劇が面白くなる!

韓国時代劇によく登場する人物といえば、朝鮮王朝の国王であった中宗、光海君、仁祖、粛宗、英祖、正祖を中心にして、王妃、側室、王子、王女、女官などです。本サイトでは、ドラマに登場する人物をよく取り上げています。

ページ上部へ戻る