トンイ(淑嬪・崔氏)が王宮入りした経緯が怪しい!

粛宗を誘惑した女性

女官の場合は、王の身のまわりの世話をする仕事が多く、王と出会う機会がよくある。しかし、ムスリは下働きだけなので、王に近づく機会はまったくない。とはいえ、現実的に淑嬪・崔氏は粛宗の寵愛を受けている。そこにどんな経緯があったのか。
もっともらしく伝わっているのが次の話だ。
ある夜、粛宗はなぜか寝つかれなくなり、宮中を1人で散歩していた。すると、灯がついた部屋が気になった。行ってみると、部屋の中には祝いの料理が用意され、その前で1人の女性が何かを祈願していた。
「なぜ、そのようなことをしておるのか」
不思議に思った粛宗が尋ねると、女性が答えた。
「私は仁顕王后様に仕えていた者でございます。今日は仁顕王后様のお誕生日なのですが、直接お会いしてお祝いを述べることができないので、せめてこのように料理を用意してお誕生日を祝ってさしあげているのです」
粛宗は心から感動した。
以来、粛宗はその女性を側室にした。それが淑嬪・崔氏だった。




話としては出来すぎている。粛宗が夜に1人で宮中を散歩するというのもありえないことだし、ムスリの身分でありながら部屋を独占して祝いの料理を並べるというのも不自然だ。事実とはほど遠いように思える。
なぜこの話が広まったのか。淑嬪・崔氏が粛宗を誘惑したことを暗示するためではないだろうか。
可能性として一番考えられるのは、西人派(仁顕王后を支持していた)が追い詰められ、艶福家の粛宗に好みの女性を送り込んだということ。その女性が淑嬪・崔氏だったのではないか。それならば、一介のムスリに過ぎない彼女が王に会えたということも不可能ではない。
いずれにしても、淑嬪・崔氏は粛宗が寵愛する側室となった。張禧嬪にとっては、大変な脅威であったことだろう。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

史実の『トンイ毒殺未遂事件』はどのように起こったのか

発掘!トンイの正体をめぐって3つの説が噂されていた

トンイ(淑嬪・崔氏)は陰で何を画策していたのか?

張禧嬪(チャン・ヒビン)が粛宗(スクチョン)の心を奪った日々!

張禧嬪(チャン・ヒビン)がついに王妃に成り上がった日!

固定ページ:
1

2

関連記事

ピックアップ記事

必読!「悪女たちの朝鮮王朝」

本サイトには、「悪女」というジャンルの中に「悪女たちの朝鮮王朝」というコーナーがあります。ここでは、朝鮮王朝の歴史の中で政治的に暗躍した女性たちを取り上げています。
朝鮮王朝は儒教を国教にしていた関係で、社会的に男尊女卑の風潮が強かったのです。身分的には苦しい境遇に置かれた女性たちですが、その中から、自らの才覚で成り上がっていった人もいます。彼女たちは、肩書社会に生きる男性を尻目に奔放に生きていきましたが、根っからの悪女もいれば、悪女に仕向けられた女性もいました。
「悪女たちの朝鮮王朝」のコーナーでは、そんな彼女たちの物語を展開しています。

もっと韓国時代劇が面白くなる!

韓国時代劇によく登場する人物といえば、朝鮮王朝の国王であった中宗、光海君、仁祖、粛宗、英祖、正祖を中心にして、王妃、側室、王子、王女、女官などです。本サイトでは、ドラマに登場する人物をよく取り上げています。

ページ上部へ戻る