光海君(クァンヘグン)を廃位にした仁祖(インジョ)に正当性はあるのか

卓越した外交戦術家

結局、クーデター軍が挙げた大義名分は「こじつけ」ばかりだったのですが、あえて言えば、継母の仁穆王后を幽閉した件は責められても仕方がありません。「孝」を最高の徳目とみなす儒教を国教にしている朝鮮王朝では、「息子」が「母」を処罰することがあってはならないのです。
この点では、クーデター軍の言い分に一理あると言えるでしょう。




光海君を追放して王位に就いた仁祖は、自らの正当性を強調するために、徹底的に光海君を悪者に仕立てあげました。その非難が定着し、以後の朝鮮王朝で光海君は暴君と言われ続けました。
しかし、20世紀の後半になって、光海君の見方は一変してきます。歴史研究が進んでくると、光海君を「卓越した外交戦術家」と評価する論調が増えてきたのです。それにつれて、光海君を暴君とみなす風潮も改まっていきました。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

光海君と仁祖について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社)

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』

これが光海君(クァンヘグン)という国王だ!

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