多くの血が流れた「甲午士禍」が終わった後の宮中は、無残な荒野のようだった。二つの虐殺事件の後、燕山君(ヨンサングン)の暴政はさらに悪化していき、庶民の暮らしは貧窮を極めた。
国家の一大事
庶民の暮らしが悪化しても、女遊びと酒宴に明け暮れる燕山君。怒りを覚えた人々は、
「王は女と酒のことしか頭にない愚劣な人物だ」「血に飢えた暴君」という落書きをハングルでいたるところに書きなぐった。
それを知った燕山君は逆上した。
「無知な民なんかに言葉を与えるからこうなるのだ。王を敬えない者は人間ではない。人間でないなら言葉なんかいらないだろう」
そんな屁理屈で、ハングルは全面禁止となり、使える文字は漢字だけになった。ハングルで執筆された書物の焚書まで行なわれた。
もはや国のどこを探しても燕山君に恨みを抱かない者はいなくなった。そうなると、彼の王位を剥奪しようとする動きが、生き延びた官僚たちの中から起こり始めた。
クーデターを起こそうとしていた成希顔(ソン・ヒアン)と朴元宗(パク・ウォンジョン)は、まず初めに宮中で人望の厚かった柳順汀(リュ・スンジョン)に計画を打ち明けた。
「もはや王にはついていけません。ぜひ倒さなければなりません。どうか、お力をお貸しください」
「今は国家の一大事だ。私でよければ力になろう。近いうちに王は、都を離れて行楽に行くので、その頃が決起しやすい」
柳順汀の提案により、クーデターの決行日が決められた。(ページ2に続く)