仁祖(インジョ)とは誰か。
生没年は1595年~1649年。朝鮮王朝の16代王。在位は1623年~1649年。光海君(クァンヘグン)を1623年に追放して即位したが、失政が続いて苦しい統治を強いられた。1637年には清の大軍に敗れ、清の皇帝の前で屈辱的な謝罪をさせられている。
外交の失敗
仁祖に会った。
彼がどこにいたかというと、漢江(ハンガン)のほとりの三田渡(サムジョンド)だった。そこで漢江の流れを見ながら、ひたすら何かを拝んでいた。おそるおそる近づいていって、「もしや朝鮮王朝の16代王?」と声をかけると、仁祖は大いに驚いて顔をこわばらせた。
「なぜ、余のことがわかったのか」
「三田渡で国王の格好をしていたら、間違いなく16代王とわかりますよ」
「それもそうだな。ここでは、朝鮮王朝で一番の屈辱を受けたからな」
「光海君を追放してせっかく王になったのに、なんで異民族に攻められてあんなことになってしまったんですか」
「我が国の北方には後金という強い国があって、それが後に清と国号を変えて中国大陸まで制覇した。しかし、余にはその清が野蛮な国としか思えなかったのだ」
「光海君は巧みな外交を展開して異民族からの侵攻を防いでいました。そこへいくと、あなたの外交は下手くそだったとしか言いようがありません。やはり、国を守るためには巧みな外交戦術というものが必要だったんですよ。それなのに、あなたはひたすら清を低く見て、情勢を完全に誤りましたね」
「それは認めざるをえない。我が国は一度清に攻められて敗北していたので、その時点で二度と侵攻を受けないように立ち回らなければいけなかった。しかし、余はそれができず、再び清に攻められて窮地に陥ってしまったのだ」(ページ2に続く)
仁祖(インジョ)はなぜ趙氏(チョシ)をあれほど寵愛したのか