政権を取った高官たちの思惑
「朝鮮王朝実録」の記述には、新しい王を擁立する派閥の意向がかなり盛り込まれている。たとえば、クーデターで王を追放した場合、クーデターを成功させて政権を取った側が先王時代の「朝鮮王朝実録」を書くので、追放した王を辛辣にけなす。まるで極悪人のような書かれ方なのだ。
あるいは、先の王から恩恵を受けた官僚たちが編集委員会を組織する場合は、称賛のオンパレードだ。そういう意味では、「朝鮮王朝実録」の記述は公平と言えないのだが、人間が作るものだからその点は仕方がない。
そんな書き手側の事情を知りながら「朝鮮王朝実録」を読むと、政権を取った高官たちの思惑が見えてきて、かえって記述が面白くなってくる。
初代王・太祖(テジョ)から27代王・純宗(スンジョン)まですべての王の「朝鮮王朝実録」が存在するが、現在の韓国で認められているのは、25代王・哲宗(チョルチョン)までである。
なぜかと言うと、26代王と27代王の「朝鮮王朝実録」の編集に朝鮮総督府が関わっていることが問題視されたのだ。そういう事情があって、韓国では初代から25代王までの「朝鮮王朝実録」を正式に認定している。(ページ3に続く)