ハン・ヒョジュ主演『トンイ』の史実で何が起きたのか/第2回「明聖王后」

 

粛宗〔スクチョン〕の母であった明聖〔ミョンソン〕王后は、張玉貞〔チャン・オクチョン〕の美貌に隠された野心を見逃さなかった。
「あの女は何か良からぬことを考えている。宮中にこのままいさせてはならぬ」
明聖王后は、粛宗が張玉貞に心を奪われていることが我慢できなかった。我が子の将来を憂い、その元凶となりそうな芽は早めに摘んでおきたいと考えたのだ。




彼女はすぐに手を回して、張玉貞を宮中から追い出した。王として君臨する粛宗も、母の強い意志には逆らえなかった。
しかし、1681年に粛宗の継妃となっていた仁顕〔イニョン〕王后は、あまりに人が良すぎた。正妻でありながら、王が寵愛する女性が宮中を追われたことに同情を示したのだ。
「殿下に気に入られている女官が長く宮中にいないのはいかがなものでしょうか。再び呼んであげるのがふさわしいのでは……」
仁顕王后がそう進言すると、明聖王后は露骨に嫌な顔をした。
「あの女をまだ見たことがないからそう言うのでしょう。あの女は毒々しくて悪だくみをしそうですよ。主上〔チュサン〕(王のこと)が最近感情の起伏が激しくなってきたけれど、もしあの女にそそのかされているのならば、国家にとってもわざわいです。内殿〔ネジョン〕(王妃のこと)も私の言うことをよく考えてみてください」
ここまで言われても、仁顕王后はまだ張玉貞を弁護した。
「まだ起こってもいないことを今から心配しなくてもよろしいのでは……」
この言葉に明聖王后は驚いた。
<人がいいにもほどがある。彼女には嫉妬という感情がないのかしら>
そう思えてならなかった。
いくら仁顕王后が甘い顔をしても、明聖王后は張玉貞を宮中に呼び戻すことには反対だった。
その明聖王后が長生きしていれば、張玉貞が日の目を見る機会は二度となかったはずなのだが……。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

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