朝鮮王朝は儒教を国教にしていたが、儒教の最高の徳目と言われたのが「仁」である。この漢字を諡(おくりな/死後の尊号)につけているのが12代王の仁宗(インジョン)だ。「彼ほど親孝行な王族はいない」と言われたほどの人物であった。
父の病状回復を祈念
朝鮮王朝の歴史の中で残念なことはたくさんあるが、親孝行で知られた仁宗の在位期間があまりに短かったことも、その1つだ。
わずか8カ月。
これほど在位期間が短い王は他にいない。歴代で最少期間である。
なぜ、それほど在位期間が短かったのか。
その理由を考えてみよう。
1つは、父の中宗(チュンジョン)が病に倒れてからの献身ぶりが影響したというものである。
中宗は1544年11月に重病となったが、長男の仁宗は父の病床に詰めて自ら看病にあたった。
しかも、その合間に祈祷を欠かさず、一心不乱に父の病状回復を祈り続けた。
実は、仁宗は生後まもなくして実母を失っている。それだけに、母の分まで父に孝行を尽くしたいという気持ちが強かった。
それでも、仁宗の孝行心は度が過ぎていた。
極め付きは、食を断ってしまったことだ。
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