臨終の場に1人だけ
貞純王后はこう言いました。
「先王(英祖〔ヨンジョ〕)も同じような病気になったときに、薬をうまく調合したら治った。なぜ同じ薬を出さないのか」
貞純王后は侍医や正祖の側近をさらにどなりつけます。いかにも、正祖の安否を心配しているという姿勢を見せていたのです。
そして、正祖が危篤になったときにまた現れて、「私が看病するから、皆の者は下がっておれ」と命令しました。
これによって、正祖の病床の前は貞純王后だけになりました。当然ながら、側近たちは部屋の脇に待機して、中の様子をうかがっています。
すると突然、部屋の中から号泣する声が聞こえてきました。「大変だ」と側近たちが駆けつけてみると、正祖はもう息絶えていました。
「何ということをなさるのですか」
側近たちは貞純王后に詰め寄ります。王の臨終の場面で立ち会いが1人だけでは大問題になります。
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