悲劇の国王・端宗(タンジョン)

王に対する無礼

9代王の成宗は資質が優れた王で、政治的業績も多いのですが、女性問題で何かとトラブルを起こしています。不運だったのは、最初の妻が10代で病死してしまったことです。王はすぐに再婚するのが常でしたから、成宗は二番目の妻として斉献(チェホン)王后を迎えます。ここから、血塗られた朝鮮王朝の歴史が始まります。
斉献王后は非常に嫉妬深い人で、成宗の側室を呪い殺そうとしました。そういう行為は大罪にあたります。なぜなら、朝鮮王朝時代には、呪術的な儀式で本当に人を呪い殺すことができると信じられていたからです。
結局、斉献王后は成宗の寵愛を失います。それどころか、完全に嫌われてしまいます。以後、成宗は側室の部屋を訪ね歩くだけで、正室の部屋に近づきませんでした。斉献王后の寂しさは募る一方でした。
ただ、時間が過ぎて成宗の心にも変化が生まれました。彼は久々に斉献王后の部屋を訪ねたいと思うようになりました。斉献王后にとっては、再び王の寵愛を受ける好機です。




しかし、結果はまるで逆になりました。なんと、斉献王后が成宗の顔を引っかいてしまうという事件が起こりました。もともと感情が激しい女性ではありましたが、こともあろうに王に対してそんな無礼を働き、宮中で大問題になりました。
結局、斉献王后は王宮から追放されて廃妃になります。朝鮮王朝には廃妃になった王妃が何人もいますが、斉献王后はその最初の女性です。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

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