1446年、朝鮮王朝の4代王・世宗(セジョン)が民族固有の文字「訓民正音(フンミンジョンウム)」を公布した。この「訓民正音」は“民に教える正しい発音”という意味である。
高官たちの抵抗
世宗は「訓民正音」の公布に際して「学問がない人は、言いたいことがあっても、思いどおりに意思を表すことができない。これを不憫に思って、新たに文字を作った」と意義を強調している。
それ以前に、民族に固有の文字はなく、中国から伝わった漢字が公式の文字だった。しかし、学問をする機会がない民衆は漢字を覚えられなかったので、両班(ヤンバン)を中心とする特権階級だけが、文字を自在に操ることができた。このことを理不尽だと考えた世宗は、民族固有の文字の創製に着手した。
ただし、彼がどのくらい「訓民正音」に関与していたのかは不明である。韓国時代劇の『大王世宗』では、世宗が様々な年齢層の喉を調べながら固有の文字の創製を自ら行なう姿が描かれていたが、実際には優秀な学者を動員して作り上げたというのが常識的なところだろう。
とはいえ、世宗が主導的な立場を果たしたことは間違いない。
せっかく公布された「訓民正音」だが、社会的な普及はなかなか進まなかった。それは、政権を担う高官たちの抵抗が大きかったからだ。
彼らにとっては、庶民が知らない漢字に習熟していることが特権階級の証だった。わかりやすい文字が普及してしまったら、自分たちの権威がおびやかされることになるのだ。そういう意図があって、歴代の高官たちは「訓民正音」を軽視し、漢字が公式の文字であり続けた。
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