謝罪する世子
イ・ソンの素行の悪さは、何度も英祖の耳に入っていた。
イ・ソンが酒乱であることも英祖は知っていた。側近に暴力をふるうことも……。
それでも、英祖は息子を信じようとした。信じていたかった。
しかし、今回ばかりは英祖の忍耐も限界を越えた。
それからしばらくして、英祖はイ・ソンを呼び出した。
震えながらイ・ソンが英祖の前に出ると、父は刀をふりかざしていた。
イ・ソンは庭先で頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「許してください。もう二度といたしません」
英祖は息子の言葉を無視した。
そして、怒りにまかせて叫んだ。
「自決せよ。今ここで自決するのだ」
イ・ソンは恐怖で真っ青になった。
そばにいた高官たちは英祖の怒りを解こうとしたが、それは無理だった。
英祖の決意はあまりに固かった。
(ページ3に続く)
英祖(ヨンジョ)と思悼世子(サドセジャ)〔第1回/老論派の陰謀〕