正室の嫉妬が激しかった
奇皇后が貢女として元に行ったのは1333年と言われている。
彼女の美貌を、高麗出身の宦官(かんがん)だった高龍普(コ・ヨンボ)が見逃さなかった。
高龍普は、奇皇后を皇室付きの女性として推薦することで、自分も有利な立場になろうと考えた。
高龍普の狙い通り、奇皇后の美貌は12代皇帝トゴン・テムルの心をつかんだ。彼は奇皇后をとても気に入り、すぐに側室にした。
しかし、奇皇后には恐ろしい敵がいた。それは、トゴン・テムルの正室のタナシルリだった。彼女は異様なほど奇皇后に嫉妬した。
こうなると、奇皇后の立場も危うくなる。よほどうまく立ち回らないとタナシルリに排除されるのが目に見えていた。
タナシルリは元の重臣のエル・テムルの娘である。
家柄の良さで皇后の座に就くことができたのだが、タナシルリ自身の立場も万全とは言えなかった。なぜなら、エル・テムルとトゴン・テムルが激しく対立するようになってしまったからだ。
そんな状況もタナシルリの心を不安定にさせた。彼女は皇帝の寵愛を受ける奇皇后を激しく憎んだ。
(中編に続く)
文=慎虎俊(シン・ホジュン)+「歴史カン・ヒボン」編集部