厳しい身分制度が悪女を生んだ
張緑水は、王と虚飾に溺れた日々を過ごし、それが永遠に続くと錯覚していた。
しかし、暴君の悪政は長く続かなかった。
1506年、国を憂えた高官たちがクーデターを起こして、燕山君は王位を追われて流罪となった。正妻だった慎氏(シンシ)は廃妃となり、その他に燕山君の取り巻きたちも処罰された。
張緑水は斬首となり、その遺体はしばらく市中にさらされた。その遺体に向かって多くの民衆が唾を吐いて石を投げたという。暴政のせいで生活が苦しくなった恨みを露骨にぶつけたのである。
果たして、暴君の燕山君を誘惑して、さらなる悪政に走らせた張緑水の本性とは何だったのだろうか。
もちろん、彼女が希代の悪女であることに変わりがないが、極端に貧しい家で育った女性が、自らの欲望を叶えた末に虚飾に溺れたと考えれば、張緑水もまた厳しい朝鮮王朝の身分制度の犠牲者の1人だったと言える。それが、彼女の悪名にとっての免罪符になるわけではないのだが……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
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