父は韓国の済州島(チェジュド)の出身だった。生前、私にこう言っていた。「死んだら済州島に埋めてくれ」願いどおり、父は日本で骨になったあとで故郷の墓地に埋められた。
小さな古墳にまつられる
母の悩みは父の先祖の墓が済州島の各地に散らばっていることだった。悩むには理由がある。
韓国は土葬の国である。「人間は死ねば、身体は土に還り、魂は空に飛んで行く」という考え方が根強い。その結果、世を去った人は火葬されずに、そのまま土に埋められて、その上にお椀のような形をした土を盛られる。死者は小さな古墳にまつられるのだ。
しかし、この方式だと墓地用の土地がかなり必要だ。時が経てば、狭い韓国が墓地だらけになってしまう。現に、そうなっている。
ソウルでは、墓地用の土地がないことを理由に、火葬が奨励されるようになった。何年か前にソウルの火葬の割合は60%を超えたという新聞記事を読んだような気がする。大都市では、急速に火葬が増えているというわけだ。
しかし、済州島は違う。土地もあるし、伝統的な土葬が当たり前である。ただし、墓守が大変。何かと重労働をともなうからだ。
(ページ2に続く)