韓国から親しい友人が来たので、浅草を案内したことがある。彼は大変な博学なのだが、浅草を歩いていて「韓国では考えられない」と首をかしげた。何かというと、あるソバ屋が創業百年を誇示する看板を掲げていたのである。
老舗に関する日韓の違い
日本の飲食店で、「うちは古くから営業している老舗ですよ」とアピールしている光景はどこでも見られるだろう。
しかし、韓国から来た友人の受け取り方は違った。
「韓国では食堂で成功したら、子供たちに最高の教育を受けさせてエリートにさせようとするだろう。『ウチの店は継がないでいいから、医者や大学教授をめざせ』と子供たちにハッパをかけるのが当たり前。それなのに、あの店は代々の子孫がずっと継いでソバ屋を開いているという。韓国の人があの看板を見れば、『あの店は百年も頭がいい子供が出なかったのか』と思ってしまうだろう」
彼の話を聞いていて、韓国の食堂で何人かのアジュンマ(おばさん)が自慢げに言っていた言葉を思い出した。
「私はこの商売をやっていて、息子(あるいは娘)を外国に留学させたよ」
学歴偏重の韓国では、親はこぞって子供たちがいい大学を出てエリートになることを心から願う。
お店を経営している人や職人さんにしても、「跡を継がなくていい。それより必死に勉強しろ」と口がすっぱくなるまで子供に言うのである。
そういう風潮が「韓国には老舗がほとんどない」という現状を生んでいるのかもしれない。日本では、「子供が家業を継ぐ」というと喜ぶ親が多いが、韓国はまったく違うのである。
文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕
構成=「歴史カン・ヒボン」編集部
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