謎めいた創製過程
世宗は、愛する民が文字を読めず、自分の名前すら書けないことに心を痛めていた。その思いが、世宗に訓民正音の創製を決意させるきっかけとなった。
しかし、庶民が使える文字を作ることを、高官たちは快く思わなかった。当時、漢字の読み書きができることは一種のステータスであり、都合の悪い条例でも漢字で作製すれば大衆からの批判をかわすことができた。
そうした思惑もあり、民族固有の文字を作る作業は、秘密裏に進められた。そのことは、「朝鮮王朝実録」からも読み取れる。
なぜなら、その創製過程に関する記述が一切なく、1443年に完成してから突然訓民正音が出てくる。
そのため、訓民正音を、誰が、いつ、どうやって作ったのか、いまだ未知な部分が多く、現在でも諸説が唱えられている。
こうした創製にまつわる“謎”をモチーフに、世宗の治世を訓民正音をめぐる暗闘という視点で描いたのが2011年に大ヒットした時代劇『根の深い木』である。
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