孝明世子(ヒョミョンセジャ)
3人目は、孝明世子(ヒョミョンセジャ)である。
孝明世子といえば、パク・ボゴムが主演した『雲が描いた月明り』の主人公であったイ・ヨンのモデルとなった人物だ。
1809年に生まれた孝明世子は、頭脳明晰で容姿も端麗だったと言われている。今でいえば、パク・ボゴムのイメージにピッタリだ。
息子の才能を大いに買った父親の23代王・純祖(スンジョ)は、孝明世子が18歳のころから政治を代行させた。
その期待に応えて、孝明世子は人事面で手腕を発揮し、芸術振興や王室の儀式の改善などに力を尽くした。
「国王になればどんな名君になるだろうか」
周囲がそのように期待したが、わずか21歳で血を吐いて急死してしまった。
彼がもし国王になっていれば、朝鮮王朝の停滞した政治を大いに改革して、見事な成果を発揮したはずだ。
しかし、孝明世子の急死によってその後の王位継承は混乱し、朝鮮王朝は衰退せざるを得なかった。孝明世子の死は、朝鮮王朝にとっても本当に痛手だったのである。
こうして見ても、昭顕世子、思悼世子、孝明世子の3人は、朝鮮王朝の歴史の中でも「悲劇の三大世子」と言えるだろう。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
イ・ヨン(孝明世子〔ヒョミョンセジャ〕)はどんな人だったのか?