ライバル対決の終わり
ドラマの展開上は、張禧嬪がトンイにぶざまに屈伏する形になった。それを象徴するのが、張禧嬪がトンイの服のすそをつかみながら「せめて世子だけは守って」と懇願する場面だった。
史実ではありえない話だ。
しかし、ドラマではここが見せどころになっている。
「自尊心が強くて高慢で嫉妬深い女性が、謙虚で思いやりがあって明るい女性をとことんいじめ抜くが、最後の最後になって自分の負けがわかるとぶざまにひざまずく」
このように立場が逆転する展開は、現代劇でも時代劇でも、「ドラマの王道」と言ってもいい。
その王道に忠実に『トンイ』は制作され、張禧嬪の最期をもって2人のライバル対決は終わったのである。
歴史書に残る史実では、張禧嬪が死罪になる前に淑嬪・崔氏に会った形跡はまったくないのだが……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。
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