誰も止められない暴政
柳子光は、燕山君に告げ口をした。
「士林派の奴らは王を敬うどころか、軽んじている不忠者でございます。絶対であるはずの王にあれこれ文句を言うのが、その証拠です。そのような者たちを野放しにしておけば王の権威に関わります」
1498年、燕山君は柳子光の本心を見抜いた上で、士林派の粛清を始めた。この事件で朝鮮半島は血で赤く染まっていく。燕山君の暴政の始まりだ。
臣下たちは縮み上がった。燕山君に歯向かうことは死を意味していた。こうして燕山君の暴政を誰も止められなくなった。
彼は張縁水(チャン・ノクス)という悪女を側室に迎え入れると、自堕落な遊びにふけるようになった。
王を中心に、毎日のように酒池肉林の宴が開かれた。さらに、国家の最高学府である成均館(ソンギュングァン)までも酒宴場に変わった。庶民はその事態を嘆くことしかできなかった。
「成宗様の時代は天国だったが、今は地獄だ。ジッとして時代が変わるのを待つしかないのか」
しかし、本当の地獄はこれから始まることに誰もきづかなかった。朝鮮王朝518年の歴史の中で最悪の虐殺劇が幕を開けようとしていた。
文=慎 虎俊(シン・ホジュン)