王の毒殺に関わった文定(ムンジョン)王后/悪女たちの朝鮮王朝4

文定王后について紹介している『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』(康熙奉〔カン・ヒボン〕著/実業之日本社発行)

騒動を起こした理由は?

6月25日に仁宗の病状が悪化した。それなのに、文定王后が高官たちに声をかけてきた。
「殿下の病状がとても重いようです。女官たちの泣き叫ぶ声が外まで聞こえます」
言い方がなんとも他人行儀だった。仮にも母である。王の病状が深刻なだけに、取り乱しても不思議はないのだが……。
それなのに、文定王后はむしろこんな意向を示した。
「私が宮殿を出て懿恵(ウィギョン)王女の家に留まりながら、殿下の見舞いにも行きましょう」
それは突拍子もない言葉だった。




懿恵王女は文定王后の娘だが、すでに他家に嫁いでいる。しかも、大妃(王の母)が王宮の外に出るというのは慣例にないことだった。
なぜ、文定王后は騒動を起こそうとしたのか。
目的は2つあると思われる。
まずは、高官たちを大いに混乱させることだ。現に、文定王后の外出の件をめぐっては、高官たちが何度も集まって対応を協議している。仁宗の病状が危険なときに、高官たちは文定王后によってさらに混乱させられたのだ。
もう1つは、仁宗の危篤を王宮の外に広く知らせること。実際、王女の屋敷は人の出入りが多い場所にあった。
そこに文定王后が行けば、人々がいろいろなことを噂して、結果的に仁宗の病状がもれる可能性が高かった。
そうなれば、仁宗の王権が揺らぐことにつながりかねない。それが文定王后の狙いでもあった。(ページ3に続く)

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