人が良すぎる王妃
明聖王后は露骨に嫌な顔をした。
「あの女をまだ見たことがないからそう言うのでしょう。あの女は毒々しくて悪だくみをしそうですよ。主上(チュサン/王のこと)が最近感情の起伏が激しくなってきたけれど、もしあの女にそそのかされているのならば、国家にとってもわざわいです。内殿(ネジョン/王妃のこと)も私の言うことをよく考えてみてください」
ここまで言われても、仁顕王后はまだ張禧嬪(チャン・ヒビン)を弁護した。
「まだ起こってもいないことを今から心配しなくてもよろしいのでは……」
この言葉に明聖王后は驚いた。
<人がいいにもほどがある。彼女には嫉妬という感情がないのかしら>
そう思えてならなかった。
いくら仁顕王后が甘い顔をしても、明聖王后は張禧嬪を宮中に呼び戻すこには反対だった。
その明聖王后が長生きしていれば、張禧嬪が日の目を見る機会は二度となかったはずなのだが……。(ページ3に続く)