天にも昇るような感激
ようやく仁穆王后が現れた。
彼女は綾陽君に優しく声をかけた。
「泣くことはない。大きな慶事を成したのに、なぜ泣く必要がある?」
すると、綾陽君はかしこまって言った。
「まだ大事が終わらないうちに日が暮れてしまいました。私の罪は万死にあたいするのでは……」
仁穆王后は「謙遜しないで」と返答した。「どんな罪があるというのか。私は薄幸の運命を持っているようで、大変な災いを受けた。逆魁(ヨククェ/光海君のこと)が私のことを仇のように思って、私の父母や親族を殺し、幼い息子を殺害して私を西宮に幽閉したのだ」
仁穆王后はさらに続けた。
「このからだは長い間隔離されて、どんな消息も耳に入ってこないようにされていた。けれど、まさか今日のような日がくるとは! 夢にも思わなかった」
ここまで一気に語ると、仁穆王后は綾陽君の後ろにいた家臣たちに声をかけた。
「昨晩、夢に先王(宣祖)が現れて、慶事が起きると知らせてくれた。みんなが改めて人の道を示してくれたのだ。この功労をどのように讃えれば良いのか」
ここまで称賛されて、クーデターを成功させた人たちは天にも昇るような感激を味わった。
(後編に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
提供=「ロコレ」
光海君(クァンヘグン)が仁穆(インモク)王后に復讐された日(後編)