申叔舟(シン・スクチュ)は15世紀の朝鮮王朝を代表する知識人だった。ドラマ『王女の男』の中で申叔舟は、巧みな勧誘を拒めなくなって、ついに首陽大君(スヤンデグン)の味方になっていく。しかも、物語が進むにつれて、申叔舟自身の欲もクローズアップされた。彼は出世に目がくらんだ男だったのだろうか。
言語の達人
申叔舟は、4代王・世宗(セジョン)にとても可愛がられた知識人だった。
世宗は王朝内の文化技術をより一層発展させるために、集賢殿(チプヒョンジョン)という研究機関を作り、人材を広く集めた。
その中でもひときわ優秀だったのが申叔舟である。
彼は世宗とともに朝鮮王朝独自の文字「訓民正音(フンミンジョンウム)」(後のハングル)の創製に力を注いだ。
こうした実績が示すように、申叔舟は王朝の中でも指折りの学者であった。本を読むことを好み、向上心が並はずれていた。彼は自宅にある膨大な書物を読むだけでなく、王宮にある本や資料を片っ端から読みつくし、「もはや読んでいない本はない」と豪語できるほどだった。
勉学の甲斐があって、申叔舟は中国や日本の言葉にも精通するようになった。
彼の言語の知識はとてつもなく深かった。その学才を買われて、申叔舟は日本への特使に派遣されたこともあった。(ページ2に続く)