朝鮮王朝時代に「悪の女官」の代名詞になったのが金介屎(キム・ゲシ)だ。彼女が仕えた王は15代王・光海君(クァンヘグン)。彼は、自分が王位に上がる過程で、実兄の臨海君(イメグン)、異母弟の永昌大君(ヨンチャンデグン)という2人の兄弟に勝たなければならなかった。それだけ骨肉の争いが激しかったのだが、光海君の陰で暗躍したのが金介屎だった。
恐るべき策略家
金介屎は、10代王・燕山君(ヨンサングン)を悪の道にひきずりこんだ側室の張緑水(チャン・ノクス)とよく比較されるが、存在感はまるで違う。張緑水は歌と踊りに優れていたとはいえ、政治的には戦略を持たないただの浪費家にすぎなかったが、金介屎のほうは、機を見て敏に動ける恐るべき策略家だった。
光海君を裏で支えた金介屎だが、側室になっていない。出身が奴婢であったし、容姿も劣っていたと言われている。韓国時代劇『宮廷女官キム尚宮』では、イ・ヨンエが金介屎に扮していたが、あれほどの美人女優に演じてもらって一番驚いたのが、草葉の蔭の金介屎本人であろう。
彼女は幼い年齢で王宮に入り、一時は世子の女官となって光海君に頼りにされ、後に14代王・宣祖(ソンジョ)に抜擢されて側で仕えた。その理由は、文書の扱いが卓越していたからだ。よほど頭脳が明晰であったのだろう。
宣祖は最初の正妻だった懿仁(ウィイン)王后との間に子供をもうけることができなかった。彼は朝鮮王朝で最初の庶子出身の王である。つまり、側室の子供だった。それだけに、自分の代では正室が産んだ息子をぜひ後継者にしたいと考えていたが、懿仁王后との間ではそれを果たせなかった。やむをえず、側室が産んだ長男・臨海君と二男・光海君のどちらかを世子に指名しようとした。(ページ2に続く)
粛宗(スクチョン)に愛された張禧嬪(チャン・ヒビン)/悪女たちの朝鮮王朝2