理想と現実の違い
ホン・ギルドンは、旅先でも活躍した。数々の困難を切り抜けて、新しい国を建国するまでになった。そこでホン・ギルドンは多くの子供を授かって幸せに暮らし、最後は雲に乗って、天の国に旅立った。
以上が『ホン・ギルドン(洪吉童)伝』の筋書きだが、許筠はこの小説の中で、身分制度を乗り越えて誰もが自由になる理想郷を描いた。
しかし、理想と現実は違う。許筠が身分制度の矛盾を改善しようとした熱意は権力側から反逆罪とみなされ、彼と同志は逮捕されて死罪となった。そのとき許筠は49歳であった。
反逆罪はもっとも罪が重く、家族や子孫も極刑となった。流された血の多さは、目をそむけたくなるほどだった。
しかし、許筠が夢見た理想は残った。
『ホン・ギルドン(洪吉童)伝』は次々と写本されて、世代を引き継いで多くの人に読まれた。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
息子の文宗(ムンジョン)を案じて世を去った世宗(セジョン)!
世宗を最高の名君にした訓民正音(フンミンジョンウム)の創製!