仁粋大妃の狙い
成宗は、尹氏の生活ぶりを確認するために使者を送った。
反省して謹慎生活を送る尹氏の姿を見届けた使者は、そのとおりに報告しようとしたのだが……。
実は、使者は成宗のところに行く途中で女官につかまり、仁粋大妃の前に引っ張りだされた。
仁粋大妃は強い口調で言った。
「『あの女が反省もなく高慢な暮らしをしている』と殿下に伝えよ。さもなくば……」
そんなふうに脅かされた使者は、仁粋大妃の言うとおりに成宗に報告した。
激怒した成宗は尹氏に死罪を申し渡した。それは仁粋大妃の狙いどおりだったが、尹氏にはあまりに過酷な運命となった。
このとき、成宗と尹氏との間には6歳になる息子がいた。
成宗にとっては長男である。
死罪になった廃妃が産んだ子供を次の王にすることに高官たちの抵抗があったのだが、儒教社会ではやはり長男が重んじられる。この長男は成宗が亡くなったあとに10代王として即位した。
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