訓要十条とは何か
朝鮮半島の歴史において高麗が評価されるのは、真に民族の統一を実現させたということである。以後、1910年に朝鮮王朝が終わるまで、単一の中央政府が朝鮮半島をずっと統治した。
大事業を成し遂げて王建は943年に66歳で世を去るが、高麗の未来を案じながら重要な遺言を残した。それが有名な「訓要十条」である。内容は以下の通りだ。
・仏教を重視すること
・風水地理説を尊重すること
・王位は原則的に嫡男が継承すること
・八関会と燃燈会は真心を込めて行なうこと
・平壌(ピョンヤン)を重要地と考えること
・契丹に気をつけること
・王と家臣は民を愛し、正しい政治を行なうこと
・有能な人材を登用すること
・官吏の賞罰は公正に行なうこと
・王と家臣は徳を積むこと
この中で、八関会は土俗神を祀る儀式のことであり、燃燈会は旧暦1月15日に行なう法会(火をともして仏に幸運を祈願する行事)のことだ。また、平壌は高句麗の都があった場所で、それほど王建は高句麗に尊敬の念を抱いていたのである。
また、「訓要十条」で特に大事だったのが仏教の保護。結果的に、高麗は典型的な仏教国家になった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』。