最悪の事件
燕山君は、母の死に関わった人物を徹底的に調べ始めた。
その調査書の中に李世佐の名前を見つけた時、彼の怒りは限界を越えた。こうして宮中を震え上がらせた「甲午士禍」が始まった。
手始めに、燕山君は成宗の側室たちを宮中に呼び出し、彼女たちとその子供まで無残に処刑した。
次の標的は、母の死罪に賛同した者や、それを実行した者だった。容赦なく、徹底的に死罪にした。
それでも燕山君の腹の虫はおさまらず、すでに死んでいる者たちも例外にしなかった。死者からも官職を奪った後、墓を暴きその遺体の首をはねた。
特に、以前に無礼を働いた李世佐に対する怒りは凄まじかった。燕山君は彼のみならず、一族郎党すべてを皆殺しにした。
虐殺劇はこれでも終わらなかった。燕山君を陰であやつる任士洪は、この際すべての政敵をほうむってしまおうと考えた。そこで、燕山君に嘘の報告を続け、燕山君の母の死に関わっていない者たちもこぞって死に追いやった。
無数の血が流れた「甲午士禍」。なんとか生き残った官僚たちも完全に委縮してしまい、燕山君は思いのままに独裁政治を続けた。
文=慎虎俊(シン・ホジュン)