世祖(セジョ)は、敬恵王女の動向を気にした。彼女は「国で一番の美女」という評価も受けていて、庶民の間で人気が高かった。結局、世祖は、病床にある敬恵王女を見舞うという名目を付けて鄭悰(チョン・ジョン)を配流地から戻すことにした。一旦は、敬恵王女の無言の抵抗も功を奏したかに見えたのだが……。
夫を心から愛した
世祖の側近たちは、鄭悰の罪を解いたことに猛反対した。その声を無視することもできず、世祖は再び鄭悰を配流した。
しかし、今度は寧月よりはるかに都に近い水原(スウォン)だった。世祖なりに、多少は敬恵王女に便宜をはかろうという気持ちがあったのだ。
ここで、敬恵王女は驚くべき行動に出た。なんと、夫に従って自ら配流地に赴(おもむ)こうとしたのである。よほどの重罪でないかぎり流罪者に家族が付いていくことが許される場合もあるが、王族の女性がそんな境遇に自らを置くというのは異例なことであった。それほど敬恵王女が夫を愛していたということであろうか。
ドラマ『王女の男』では、敬恵王女も最初は夫を拒絶していたが、やがて夫の深い愛を知り、徐々に夫に尽くすようになった。現実の世界でも、敬恵王女は夫を心から愛する優しい妻であったに違いない。(ページ2に続く)