緑茶を飲む習慣
私がよく韓国に行っていた20年前、身の回りで緑茶を飲む人はまったくいなかった。日本との違いに驚いたものだ。
なぜ、当時の韓国人に緑茶を飲む習慣がなかったのか。
それも朝鮮王朝時代の仏教排斥と関係している。
もともと緑茶は仏教と密接に結びついた飲み物だ。高麗王朝時代には、仏教寺院がたくさんの茶畑を営んで利益をあけでいた。
朝鮮王朝時代になると、政府は仏教を排斥するために緑茶に重税をかけた。それが原因で緑茶の栽培が衰退し、結果的に緑茶を飲む習慣がすたれてしまった。
ただし、果実茶、生姜茶、人参茶は重税から免れた。おかげで、それらのお茶を飲む習慣は残された。緑茶がすたれた分、他のお茶の需要は大いに増したとも言えるだろう。
朝鮮王朝時代に何かと目の敵(かたき)にされた仏教だが、しぶとく生き残って今や韓国でも多くの信者を集めている。
修能試験(日本のセンター試験にあたる)の日になると、受験する息子や娘のために、大勢の母親が仏教寺院で一心に祈る姿はかならずニュースの映像となる。願い事があるときに、仏教は韓国の人たちにとても頼られているのである。
文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕
構成=「歴史カン・ヒボン」編集部