最後はアラが鍋になる
魚の種類とキロ数が決定すると、とたんに注文していない魚介類が次々に出てくる。ホヤ、カキ、イカ、アワビ、ウニ、サザエの刺し身に、サバやタチウオの焼き魚……。次々に美味しいものが食卓に並ぶ。
「こんなの注文してないよ」
そう嘆かなくていい。メインの魚一匹を注文すると、まずは無料の付きだしがズラリと並ぶのが韓国スタイルなのである。
冷えた焼酎を飲みながら、先に出された魚介類を食べていると、真打ちの刺し身が出てくる。一匹丸ごとさばいているので、大皿に並びきれないほどの量になっている。食べきれない。そう思えるほどの多さだ。
しかし、食べ始めると箸が止まらない。さばいたばかりの新鮮な刺し身は抜群の旨さなのである。
大満足で食べ終えると、今度は店の人が「メウンタン(辛い鍋)にしますか?」と聞いてくる。なんのことかというと、刺し身を取ったあとのアラはどんな鍋にして食べるか、という意味なのである。「辛い鍋にするか、辛くない鍋にするか」という選択を迫られるわけだ。
「メウンタンにして!」
そういうと、ほどなくテーブルにメウンタンとご飯が運ばれる。この辛い鍋がまた絶品である。魚のダシがよく効いている。
こうして、魚一匹をアラまで食べつくすという壮大な食事が終わる。かかる料金は、魚一匹の代金のみである。それに酒代がプラスとなる。
感覚的には、日本であれこれの刺し身を注文するよりは安上がりだ。おまけに、「前座の魚介類、メインの丸一匹の刺し身、おまけのメウンタン」という組み合わせは、満足度がかなり高い。いかにも、食欲を過剰に満たすことが必須の韓国らしい刺し身の食べ方だ、と言える。
文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕
構成=「歴史カン・ヒボン」編集部