暗行御史、参上!
実は、夢龍は科挙に合格し、役人の不正を秘密裏に取り締まる暗行御史(アメンオサ〕になっていた。
全羅道の担当になった彼は、わざと物乞いの服装で世情をうかがっていた。その中で、春香の危機を知った。
その頃、学道の誕生日を祝う宴が開かれた。夢龍はその場にまぎれこみ、酒の余興として学道を批判する詩を披露した。
夢龍の本性を知らない学道は激怒するが、夢龍は「暗行御史、参上!」と叫び、その場で学道を解任した。
さらに、夢龍は学道の横暴によって罪人にされた人々を解放すると、春香を自分の前に連れてこさせた。夢龍は頭を下げたままの春香に向かって、罪を許す代わりに自分と肌を交えろと命令する。
しかし、夢龍だと気づかない春香は、断固として拒否した。
あくまでも純粋な愛を貫く春香。夢龍は彼女の献身さに胸を打たれ、ようやく自分の素姓を明かした。
権力に屈することなく貞節を守った春香。彼女の一途な愛はこうして報われた。
この物語は、厳しい身分制度や傲慢官僚の悪政に苦しんでいた庶民の喝采を浴びた。これほど胸がすく勧善懲悪は他になかった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)