伝えられている出会い
女官は王の前に出ることができるので王の目に留まる可能性もありますが、ムスリは王の前には絶対に出られない身分です。すると、どこで粛宗と淑嬪・崔氏が出会ったかが気になります。よく伝えられているのは以下のような話です。
粛宗が夜眠れないときに、ふと王宮の中を散歩していたら、どこかに灯がついていました。不思議に思って覗いてみると、若い女性がご馳走を作って必死に祈っていたのです。粛宗が「何をしているのか」と聞いたら、「今日は仁顕王后の誕生日でございます。今は王宮におられませんが、私がこの場で祝っております」と女性が答えました。
粛宗は感心し、女性は承恩(スンウン/王と一夜を共にすること)を受けることになりました。その女性が淑嬪・崔氏だということです。
エピソードとしては面白いのですが、これは作り話だということがすぐにわかります。ムスリが王宮の中でご馳走を作れるはずがないからです。
(第3回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)
出典=電子書籍『康熙奉講演録/朝鮮王朝で一番知りたい話』