朝鮮王朝人物列伝/第19回
朝鮮王朝時代には全部で27人の王が存在した。その中に最悪の暴君と呼ばれた人物がいる。それが10代王の燕山君(ヨンサングン)だ。彼は王として即位すると様々な暴政を行ない、人々を苦しめた。果たして彼はどんなことをしたのだろうか(燕山君については、韓国時代劇の史実とフィクションの違いを解説した康熙奉〔カン・ヒボン〕著・実業之日本社発行の『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』で紹介しています)。
暴君の誕生
燕山君は1476年、朝鮮王朝9代王・成宗(ソンジョン)の長男として生まれたが、彼がまだ幼かったころに母親の斉献(チェホン)王后は成宗の顔を引っ掻いたことが原因で死罪に処されてしまう。それにより、母親の愛を知らずに育った燕山君はとてもわがままな性格になってしまった。
そんな彼にまつわる話を2つ紹介しよう。
1つ目は鹿にまつわる話だ。ある日、子供時代の燕山君は成宗に庭に呼び出された。その際に成宗が可愛がっていた鹿が燕山君に近づいて、手の甲や衣服を舐めたのである。彼はそのことに激怒して鹿を思いっきり蹴とばした。それを見た成宗は「なんてことをするんだ」と自分の息子を叱った。1494年に10代王となった燕山君は、その鹿を殺してしまう。
2つ目は恩師にまつわる話である。燕山君は世子(セジャ/王の正式な後継者)のころに帝王学を学んでいたが、教育係であった側近があまりにも厳しかったようで、ずっとそのことを憎んでいた彼は、その側近も王になった直後に処刑している。
王になった燕山君は、朝鮮王朝の最高学府である成均館(ソンギュングァン)を酒宴場にして、毎日のように酒池肉林を繰り返したり、女と放蕩三昧をするなど王としてあるまじき行為を行なった。
さらに、大きな事件を2つ起こしている。(ページ2に続く)