なるほど韓国22「ぼられる楽しみ」

ブレない主人

ソウルの南大門(ナムデムン)にある露店の飲み屋も忘れがたい。
通りに丸いテーブルがいくつも出してあって、心地よい風が吹く夜に私は家族と一緒にマッコリを飲んだ。
となりには、夫婦と娘2人の4人連れがいた。
その家族が帰り際に店の主人ともめてしまった。勘定のことでかなりの言い争いがあり、中年の女性が声を荒らげて去って行った。
主人は30代後半の男性。あとで私たちのテーブルに来て、こうぼやいた。
「見たでしょ。さっきのお客さん、あまりにひどいと思いませんか。娘2人を留学させたと私にさんざん自慢していたんですよ。それが会計になって、2万5千ウォンと言ったら血相を変えて、あんなに怒っていたんですよ。あれだけ食べて飲んで2万5千ウォンなら安いくらいですよ。本当にやっていられませんよ」
あまりに嘆くので、私も「まあ、いろいろな客がいるから」となぐさめるしかなかった。その後、私は若い主人と世間話をして、ときには笑い合った。
楽しく過ごしたあと、ホテルに帰る時間になったので、勘定をしてもらおうと思った。私はいつもの癖で、勘定を予想してみた。
「うちは4人の家族。前に怒って帰った4人家族の勘定は2万5千ウォンだった。若い主人は『ウチは安い店だ』という雰囲気をにおわせているので、私たちが日本から来ているとしても、3万ウォンがいいところかな」
そんなことを思いながら、主人の一言を待った。
彼は金額を言う前に、頭の中でいろいろ計算をしているような雰囲気を漂わせた。




その様子を見ながら、私はますます予想金額に自信を持った。
「キリがいいし、間違いなく3万ウォンだ」
頭の中で計算するポーズを終えた主人は、一瞬、ゴクリとツバを飲み込むような仕種をした。あとで考えれば、あれで金額がはねあがったのかもしれない。
「5万ウォンです」
主人の声を今でも思い出す。
勘定をめぐるトラブルを見ていた私たちに対しても、あるいは、とてもフレンドリーに話し合ってきた私たちに対しても、主人は臆することなく平然と、日本から来た人向けの金額を言ってきた。
ブレないと言えば、その通りだ。
亡き母のアドバイスは、今に至るまで効いている。

文=康 熙奉〔カン・ヒボン〕
構成=「歴史カン・ヒボン」編集部

なるほど韓国1「韓国には老舗がほとんどない」

なるほど韓国2「食べ残す韓国、残さない日本」

なるほど韓国3「死罪の方法もこんなに違う」

なるほど韓国20「酒の飲み方」

なるほど韓国21「お客様は神様ではありません」

なるほど韓国23「極端な少数精鋭主義の韓国スポーツ界」

固定ページ:
1 2

3

関連記事

ピックアップ記事

必読!「悪女たちの朝鮮王朝」

本サイトには、「悪女」というジャンルの中に「悪女たちの朝鮮王朝」というコーナーがあります。ここでは、朝鮮王朝の歴史の中で政治的に暗躍した女性たちを取り上げています。
朝鮮王朝は儒教を国教にしていた関係で、社会的に男尊女卑の風潮が強かったのです。身分的には苦しい境遇に置かれた女性たちですが、その中から、自らの才覚で成り上がっていった人もいます。彼女たちは、肩書社会に生きる男性を尻目に奔放に生きていきましたが、根っからの悪女もいれば、悪女に仕向けられた女性もいました。
「悪女たちの朝鮮王朝」のコーナーでは、そんな彼女たちの物語を展開しています。

もっと韓国時代劇が面白くなる!

韓国時代劇によく登場する人物といえば、朝鮮王朝の国王であった中宗、光海君、仁祖、粛宗、英祖、正祖を中心にして、王妃、側室、王子、王女、女官などです。本サイトでは、ドラマに登場する人物をよく取り上げています。

ページ上部へ戻る