善徳(ソンドク)女王はこんな人だった/三国時代人物列伝3

新羅の立役者

善徳女王は善政を行ない、生活が苦しい人々をよく慰問した。庶民の税金を1年間免除するという政策を実施したこともあった。
民衆から慕われたのも当然だった。
ただし、周辺の国家は女であるという理由だけで善徳女王をあなどった。屈辱を受けたのは643年のことだった。高句麗や百済との戦いが激しくなる中で、善徳女王は使者を唐に派遣して援軍を願った。




しかし、唐の態度は冷たかった。
「新羅は女が王になっているから隣国から軽んじられているのだ。我が国の王族を送るから新羅の王にしたらどうか。そうすれば援軍も派遣できるのだが……」
いわば、善徳女王に対する退位勧告だった。彼女にしても、この勧告をとうてい受け入れるわけにはいかなかった。
「他の国に頼るより、自分の国の人材を生かさなければ……」
そう考えた善徳女王は、若手を軍の幹部に抜擢した。彼らはその期待によく応え、新羅を強国に導いていった。
善徳女王は647年、自ら予言した日に亡くなった。最後まで彼女の霊感は衰えていなかった。

文=康 熙奉(カン ヒボン)

康 熙奉(カン ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人二世。韓国の歴史・文化と、韓流および日韓関係を描いた著作が多い。特に、朝鮮王朝の読み物シリーズはベストセラーとなった。主な著書は、『知れば知るほど面白い朝鮮王朝の歴史と人物』『朝鮮王朝の歴史はなぜこんなに面白いのか』『日本のコリアをゆく』『徳川幕府はなぜ朝鮮王朝と蜜月を築けたのか』『悪女たちの朝鮮王朝』『宿命の日韓二千年史』『韓流スターと兵役』など。最新刊は『いまの韓国時代劇を楽しむための朝鮮王朝の人物と歴史』

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