痛恨の事件を語る英祖(ヨンジョ)/朝鮮王朝劇場3

朝鮮王朝の安泰が第一

英祖は「思悼世子は本当に天才だった」と言った。「頭脳明晰で才能もあふれていたから、余は思悼世子が10歳のときから公式会議に出席させて政治の経験を積まそうとしたのだが……」
「結局、それがアダとなってしまいましたね」
「まさか、思悼世子があれだけ老論派(ノロンパ)を批判するとは思っていなかった。老論派といえば、余を支持していた最大派閥だった。確かに政治を牛耳ろうとしていたが、思悼世子が批判したことによって、彼らは強い警戒心を持つようになったのだ」
「思悼世子が老論派ににらまれたわけですが、あなたがしっかり守ってあげることもできたのではないですか」
「思悼世子にも問題が多かった。成長するにつれて素行の悪さが目立つようになったのだ。酒乱となって側室に暴力を振るったり、しまいには側室を殺す事件まで起こしている。何度も叱りつけたのだが、いっこうに改まる気配がなかった」




「あなたの二番目の正室だった貞純(チョンスン)王后や、思悼世子の岳父の洪鳳漢(ホン・ボンハン)が、意図的に思悼世子の悪評をあなたに吹聴したのでは?」
「そのことは、余も見抜いていた。あの連中はバリバリの老論派だけに、思悼世子の排除を狙っていた。その意図を余も承知していて、その言い分を真に受けたわけではない」
「それなら、なぜ、思悼世子を餓死させるようなことになったのですか?」
「できることなら、余も思悼世子を守りたかった。しかし、朝鮮王朝の先行きを考えた場合、果たして思悼世子が王になって王朝が存続できるだろうかという疑念も湧いてきた。歴代の王によって連綿と続いてきた朝鮮王朝。その安泰を第一に考えなければならなかった。つまり、素行に問題がある思悼世子が王になるのはふさわしくないのではないかと強く考え始めたのだ」(ページ3に続く)

思悼世子(サドセジャ)の悲劇!朝鮮王朝の重大な事件簿7

貞純(チョンスン)王后!思い通りに政治を牛耳った王妃

英祖(ヨンジョ)と思悼世子(サドセジャ)〔第1回/老論派の陰謀〕

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